日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌に論文が掲載されました。
この論文は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013(以下、学会分類2013)のとろみの各段階(薄いとろみ,中間のとろみ,濃いとろみ)の粘度範囲を決定した官能評価の結果をまとめたものです。
山縣誉志江, 與儀沙織, 栢下淳
官能評価による学会分類2013(とろみ)の粘度範囲の妥当性
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌, 21, 129-135, 2017.
前報(宇山理沙,藤谷順子,大越ひろ,栢下淳,前田広士,小城明子,高橋浩二,藤島一郎:とろみ液の官能評価による分類 粘度およびLine Spread Test値の範囲設定,日摂食嚥下リハ会誌,18, 13-21, 2014.)と併せてお読みいただければ、この粘度範囲となった経緯をご理解いただけるかと思います。
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とろみ剤を使用される際は、この学会分類2013(とろみ)をひとつのめやすとしていただけたらよいかと思います。
学会分類2013(とろみ)早見表
本表は必ず「嚥下調整食分類2013」の本文を併せてお読みください。
なお、本表中の[ ]表示は、本文中の該当箇所を指します。
粘度:コーンプレート型回転粘度計を用い、測定温度20℃、ずり速度50s-1における1分後の粘度測定結果[Ⅲ-5項]。
LST値:ラインスプレッドテスト用プラスチック測定板を用いて内径30mmの金属製リングに試料を20ml注入し、30秒後にリングを持ち上げ、30秒後に試料の広がり距離を6点測定し、その平均値をLST値とする[Ⅲ-6項]。
ヘルシーフード社サイト「栄養指導NAVI」より
では、ご使用になられているとろみ剤の場合、何%で使用すれば、どの段階になるのでしょうか。
本研究室では、とろみ剤を「標準タイプ」と「少量高粘度タイプ」に分類し、それぞれのとろみ剤を何%で使用すれば学会分類2013(とろみ)の各段階に相当する粘度になるのかを報告しています(下表)。
商品名 | 販売元 | 使用目安量(g)/水100 mlあたり | |||
薄い とろみ |
中間の とろみ |
濃い とろみ |
|||
少量 |
トロメリンV | ニュートリー | 0.6~0.9 | 0.9~1.4 | 1.4~1.9 |
ネオハイトロミールⅢ | フードケア | 0.4~0.8 | 0.8~1.4 | 1.4~2.1 | |
トロミパワースマイル | ヘルシーフード | 0.5~1.0 | 1.0~1.6 | 1.6~2.4 | |
トロミアップパーフェクト | 日清オイリオグループ | 0.5~1.0 | 1.0~1.7 | 1.7~2.4 | |
トロメリンEx | ニュートリー | 0.6~1.1 | 1.1~1.9 | 1.9~2.6 | |
標準 タイプ |
トロミクリア | ヘルシーフード | 0.5~1.1 | 1.1~2.0 | 2.0~2.9 |
明治トロメイクSP | 明治 | 0.5~1.2 | 1.2~2.1 | 2.1~2.7 | |
トロミスマイル | ヘルシーフード | 0.6~1.2 | 1.2~2.0 | 2.0~3.1 | |
新スルーキングi | キッセイ薬品工業 | 0.6~1.3 | 1.3~2.2 | 2.2~3.4 | |
ネオハイトロミールR&E | フードケア | 0.6~1.4 | 1.4~2.2 | 2.2~3.2 | |
ソフティアS | ニュートリー | 0.7~1.4 | 1.4~2.3 | 2.3~3.2 | |
つるりんこQuickly | クリニコ | 0.8~1.6 | 1.6~2.6 | 2.6~3.3 |
「少量高粘度タイプ」では文字通り、「標準タイプ」に比べ、少量の添加で強くとろみがつく傾向にあります。
これら以外にも、様々なとろみ剤があります(下表)。
使用されているとろみ剤が「少量高粘度タイプ」に分類されるかどうかは、知っておくことで添加し過ぎの防止につながります。標準タイプと比較し、少量の添加量の違いでも粘度が変化しやすいですので、計量には十分に気をつけていただけたらと思います。
商品名 | 販売元 | |
少量高粘度 タイプ |
トロメイクコンパクト | 明治 |
ソフティアSUPER S | ニュートリー | |
つるりんこpowerfull | クリニコ | |
標準タイプ | トロミファイン | キユーピー |
トロメイククリア | 明治 | |
ネオハイトロミールスリム | フードケア | |
トロミアップエース | 日清オイリオグループ | |
ソフティア1 | ニュートリー | |
スルーソフトQ | キッセイ薬品工業 | |
スルーマイルド | キッセイ薬品工業 | |
ネオハイトロミールNEXT | フードケア | |
おうちで簡単トロメイク | 明治 |
たくさんのとろみ剤があり、選択に迷われるかもしれませんが、市場に出回っているこれらキサンタンガム系のとろみ剤は、少量高粘度タイプか否かを除けば、特別注意を要する大きな違いはなく、良い製品が多いと感じます。
製品により、価格が安い、ダマにならず溶けやすい、早くとろみがつくなどのコンセプトがあるかと思いますので、ご自身のニーズに合ったものを使用されてみてはいかがでしょうか。
※ ふたつの表のとろみ剤の掲載順は、論文をもとに作成しています。
※ これらの分類は、ある一定の粘度で線引きしたもので、あくまで目安です。使用の際には、実際のとろみの強さをご確認ください。